相続不動産などの空き家と思い出のお客さま

 

私が不動産仲介をさせていただくようになって、数多くのお客さまとお出会いさせていただきました。これらすべてのお客さまを忘れることはありませんが、特に今でも記憶に鮮明に残る「相続された空き家」を処分されたお客さまのお話をしようと思います。

目次

ご夫婦との出会い

あれは私が仲介会社に勤めていた時の話です。いつものように新着物件のポスティングを日夜励んでおりますと・・・

RRRRRR!『チラシ見たんだけど、中見せてもらえる?』

この一言からご夫婦との長い長いお付き合いが始まることになります。

お会いしてみるととても穏やかで雰囲気の良いご夫婦、50代でしょうか。ご夫婦は既に分譲マンションにお住いだったのですが、3LDKでは手狭になったということでチラシの4LDK角部屋をお買い換えいただきました。

現金で検討されていましたので、3LDKのお部屋の売却、4LDKのお部屋の購入まで何ら問題なく無事取引が終わり、何度とお会いしているうちにご夫婦から『実は売りたい不動産があるんだけど・・・』とお声がけいただきました。

親御さんが亡くなられ相続された物件なのですが、閑静な住宅街の一角で高台になっており、そびえたつ雰囲気と素晴らしい眺望に圧倒されたのを今でも覚えています。

もちろん躊躇なく『是非任せください!!』ってな話になったわけです。

不動産の営業をしていますと売却依頼をいただくことが何よりの幸せでありますからね。(笑)

それからよくよく売却不動産のお話を伺っていくと、

  • 既に大手仲介会社に任せているが売れていない
  • 売却開始直後に購入申込があった
  • 売却を始めてから1年近く経っていること

と、いくつか整理しなくてはならないポイントがあったわけです。

もちろん、この大手仲介会社とは誰でも知っているような大きな大きな電鉄系の会社です。

内容を掘り下げて聞いていくと、某大手不動産会社の店長が担当されていて最初はいろいろ積極的で顔を出したり提案してくれたものの、1年近く経過し、今となっては3ヶ月に一度電話をかけてくるくらいで、売却の進捗状況報告も指定の用紙に簡単なコメントで郵送されてくるだけとのことでした。

ちなみにこの物件、私がこのお話をお聞きしたとき8,000万円近い金額で売りに出されている物件でした。

でも、この気持ちすごくよくわかるな~。

『大手に任せたらちゃんと売ってくれるはず!』

『大手なら安心して任せられる!』って皆さんも思いますよね?

この時はまだ先ほどの大手1社にのみに売却依頼をされていたのですが、次にこの担当者と会ったときに他の不動産業者にも売却活動ができるように話をしてくださるとのことでした。

正直、大手がすでに販売活動して既に一年経ってるわけですから、簡単ではないと思いながらも『何とかチャレンジしよう!』と私営業マンですから覚悟を決めるのであります。

売却活動開始!

お話をいただいてから一月ほどでしょうか。

不動産売却時に必要な『媒介契約』をいただくことになります。

相続物件といえば、必ず出てくるのが「相続する権利を持つ人は誰か」「何名いるのか」「全員連絡が取れるか」などなど、相続のルールが決められていて全部クリアしないと売却が出来ないんです。つまり、だれか一人でも反対する人がいたり、連絡の取れない人がいると売却できなくなってしまうんですね。

これが相続時に『不動産は処分して現金化しておいたほうがいいよ』なんて言われる理由でしょうね。お金なら法律で決まった持ち分で分けるだけ。不動産なんて割って持っていくわけにはいきませんから。

ってことで、本題に戻りますが、

ご夫婦の不動産、実は売却開始直後に数百万の価格交渉があったようですが、一度購入の申し込みがあったみたいなんです。もちろん悪くない話ですので、ご夫婦は相続人の一人でもある遠方に住む姉妹に話を持っていかれたのですが・・・

『ならん!両親が今まで住んでいた思い出の住まいだし、価格交渉なんて受けられない!』と姉妹のご主人さんが一蹴!

(相続するときによくあるあるですね)

ちなみに姉妹のご主人さまは相続する権利のない方です

ご夫婦は売り出し直後ということもあって、身内で揉める必要もないし、まとまらないなら仕方ないとこの商談を断られることになります。

まさかこれが、売却に3年もの時間を費やすとはだれも思わなかったでしょう。

ちなみに私、お預かりした直後に業者より購入申し込みをいただきましたが、1,000万円以上の価格交渉があったため、前回同様即却下されました。ご夫婦は納得で、結構良い価格だとは思ったのですが、姉妹のご主人さんの登場で・・・

もしかすると、某大手不動産会社店長さんもこの件でモチベーションが下がってしまったのかもしれませんね(笑)

ただこの時、理由はどうであれ「購入申し込み」が2件もあったわけですから、『間違いなく売れる!』『価格とタイミングだけだ!』と私は確信します。

ただ少しこの物件のネックをいえば、築40年ほどで少し前であれば超のつく高級住宅街なんですが、先ほどもふれましたが高台でかなり大きな擁壁のある物件なんです。
(擁壁というのは、崖や盛り土の側面が崩れ落ちるのを防ぐために築く壁のことをいい、郊外にある団地ではよく見かける家の下の石だったりコンクリートだったりするやつです)

お隣さんに挨拶に行き境界の確定、役所に行って現状の擁壁で建築物が建つかどうかの確認等々、でも何より集客です!この物件に興味を持っていただくお客様がいなくては話は始まりませんから、折込チラシ・ポスティングチラシ・自社ホームページ掲載・スーモ等ポータルサイト掲載・現地に看板と旗を設置等できうる限りの広告活動をしていきます。

もちろん、人気のある閑静な住宅街ですから、問い合わせは結構ありました。特に、都心部から「子供を育てるには素晴らしい環境」「眺望もよく正に夢の一戸建が建つ」ということで。

ところが・・・1年ほどたっても・・・

売れないんです!

問い合わせはコンスタントにあるものの、全く売れない。

理由はいくつかありますが、何より『手が届かない』。

築40年近い建物ですから、このまま使うわけにもいきませんので新築を建てるとすると、土地価格8,000万円近くで・・・建物を入れると余裕で1億超えます。

普通なら無理ですよね(笑)

問い合わせから現地をご案内、検討はするが資金的にまとまらない。

このような日々がずっと続くわけです。

問い合わせがあってもあっても売却できないのであれば、価格を下げるしかありません。

当初、数百万の交渉すら受けていただけなかった姉妹のご主人さんでしたが、事情を何度も説明してなんとか納得いただき価格を見直していくことにしました。

新たな問題

ここで新たな問題が・・・

価格の見直しに関しては皆さん納得いけただけたわけですが、今度は違う問題が出てきました。

そう、擁壁です。

今から40年近く前に郊外で山を盛ったり切ったりして造成した団地の多くにはこのような擁壁があります。

何が問題なのでしょうか?

今から40年前というと、まだ生まれていない方も多いわけで、それほど昔なわけです。

この当時、建築物や工作物を建築するときの法整備が今ほど進んでおらず、建物の確認書類が無いのは良くある話で、擁壁にしてもどのように作られ強度的にどうなのか?といった書類が一切ないんです。

つまり、強度の保証ができない以上この擁壁の上に新たに建築物が建てられない。ということなんです。

解決策があるとすれば、今ある建物を生かしてリフォームするか、擁壁を今の法律に則り作り直すかということになったわけです。

そこで、これらを解決するべく現地の写真を何枚も撮って役所に通うことになるのですが・・・一向に話は進まない。

40年近く前の基礎やら柱やらを使ってリフォームというのも結構難しいですよね。どうせなら新築をスカッと建てたいと皆さん思われることだと思います。

じゃあ、新しく擁壁を作り直したらいいんでしょ!ってことでいくつかの業者に見積もりを依頼するものの
「お隣の擁壁と一体のためできない。やったとしても解体補強だけで数百万円の費用がかかる」
「土を掘りだすだけでもダンプカー数十台必要で費用がえらいことになる」
「新しく擁壁を作ると家一軒買えるよ?」という内容でした。

何にしても、これらの費用は買主様負担になるわけで、この土地を購入したとしても後に一体いくら必要なのか見当もつかないということなんです。

そりゃあ、おすすめする私も見当もつかない物件だからどうしようもないですよね。

そうこうしているうちにまた1年の月日が流れました。

何度お会いしたでしょうか・・・売却の進捗状況もほぼ毎回変わらない内容で、それでも伺いましたね~。

おられない時は玄関ポストに、いらっしゃるときには『進展ありません・・・』とだけを伝えに。

退社

そして私はこの仲介会社を退社することになります。

お付き合いのあるお客さま全てに挨拶をし、事情を説明して回りました。

後ろ髪をひかれる思いでしたが、優秀なスタッフもおりましたので、『なんとか、後よろしくお願いします』と伝えて。

 

それから2年近く経ったある日

あの物件の近くを通る機会があり、懐かしい光景にふとご夫婦のことが気になったんです。

携帯電話にも連絡先が残されていました。

もちろん、忘れたとなどありませんでしたが、会社員時代にお出会いしたお客さまです。退社した後に個人的に連絡を取るということがなかなか当時の私にはできなくて・・・お世話になった会社に申し訳ないというか、なんというか。

あれから随分の月日も経っていましたので連絡することにしたんです。

RRRRRRRRRR・・・ガチャ

私『お元気ですか!?中井です!ご無沙汰です!』

奥さん「え!?中井さん?」

電話に出られた奥さんはあの時と同じように対応いただき、数年ぶりの連絡でしたので、なんだかんだ雑談をして何気に・・・

私『もう売れましたよね?』

奥さん「売れてないんです・・・」

私『え!!??』

なんと、あれから2年の月日が過ぎたにもかかわらず売却できていなかったのです。

おまけに、私が退社後引き継いだはずの担当からの報告が次第に無くなったこと、何度か私に連絡しようとしたが私から何も無かったので連絡しづらかったたこと、今では違う会社に売却を任せているということを聞きました。

売却価格も最初にお預かりした価格の半額以下で・・・

愕然・・・

しっかり引き継いだはずなのに・・・彼なら任せられると思ったのに・・・

でも、仕方ないことなのかもしれません。

不動産の営業なんて毎月毎月すごいノルマがあって、売れるか売れないかわからない物件のおもりなんてしている暇はない。というのが本音でしょう。

私も営業ですから、よく気持ちはわかる。

なら面白い!

躊躇なくこう言いました。

私『もう一度売却のお手伝いさせていただけませんか?というか、全部私に任せてもらえませんか?』

奥さん『お願いします。』

即答でした。

ご主人にもお伝えいただいて、後は全部任せようということで納得いただきました。

姉妹のお宅にも寄せていただき、事情をお伝えしこちらも納得いただきました。

ご売却

一般のお客さまが購入できないのはほぼわかっていましたので、不動産業者に連絡を入れ続けましたがやっぱり駄目でした。

役所にも相談しました。購入規定に沿いませんでした。

それでも何とかならないか・・・

 

それから約1ヶ月後、売却できました。

売却価格はというと・・・正直、言えないくらい安い価格です。業者に買い取っていただきました。

私が担当している間、良く現地でお会いしました。

築後40年以上経って誰も住んでいない建物で、管理もまめにできません。
雨漏りや腐食などもちろんありましたが、ご夫婦はご近所に迷惑がかからないように木々の剪定や草抜き、倒壊したら困るからとリフォームまで考えておられました。

口癖のように『この家の管理、手入れがさすがにしんどくなって来た』とよくおっしゃっていました。

「相続」=「裕福」なんて印象がありましたが、現実はとても大変なものでした。

 

本当に売却できてよかった。

 

私にご縁をいただいたにもかかわらず、退社という形で自らこのご縁を無くしたことを今でも反省しています。

売却できた時のご夫婦の笑顔は今でも忘れられません。

お出会いしてから3年・・・不動産で売れない物件はないといいます。これは間違いないと今でも思っています。

でも、売却するお客さまの諸事情やそれを担当する会社や営業そして、すべてのタイミングなど多くの要素を考慮しすすめる必要があります。

不動産を購入するのも売却するのも皆さんがそれぞれの理由で、それぞれの思いで動かれているわけです。

私たちができることはあくまで仲介という「お手伝い」ではありますが、だからこそお客さまに身近な存在でありたいと思うわけです。

 

このことがきっかけで、耳にはしていたけれどそれほど興味のなかった『空き家』について少し勉強もできましたので、簡単ですが残しておきます。

相続不動産など空き家の豆知識

平成27年2月26日に空き家対策特別措置法が施行されました。

これは読んで字のごとく「空き家」を増やさないための法律で、空き家を放置することで倒壊の危険や衛生上の問題、不法侵入の危険などを対策することを目的としています。

これは空家を所有するオーナーにとってとても重要で、特に古い空き家ではすぐに対策が必要になるかもしれません。

簡単にふれますと、

  • 建物がある土地には固定資産税が最大1/6まで優遇されているのですが、この優遇が無くなる。
    厳密にいうと今支払われている土地の固定資産税が4倍近くになる。
  • 役所からの指導・勧告・命令に従わない場合、強制処分され費用は所有者に請求される。

維持管理が難しく特定空家に指定されてしまうと思わぬ出費になる可能性があります。

詳しくはこちらをご覧ください 国土交通省:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報

もちろん、悪い話ばかりではなく

空家の譲渡所得の3,000万円特別控除といわれるものがあります。これは相続日から3年目の12月31日までに売却した場合、売却した所得から3,000万円の控除を受けられるというものです。

詳しくはこちらをご覧ください 国土交通省:空き家の発生を抑制するための特例措置

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでもお役に立てれば幸いです。

 

 

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